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zoom RSS 「ラ・プティット・バンド」演奏会!!

<<   作成日時 : 2008/05/28 23:48   >>

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行ってきました。
シギスヴァルト・クイケン「ラ・プティット・バンド」の演奏会。

クイケン三兄弟と言えば、長兄のヴィーラント(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、次兄のシギスヴァルト(ヴァイオリン)、
三番目のバルトルド(フルート)とみな古楽の神様のような人たち。
真ん中のシギスヴァルト率いるのがこのラ・プティット・バンドです。
2月に出かけた松本バッハ祝祭アンサンブル演奏会の会場で、今回の演奏会のことを知って以来、行きたいと思っていたコンサートでした。
会場はおなじみ、松本市のザ・ハーモニー・ホール。


画像



      ◇プログラム◇

    J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV.1007
         (ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ / シギスヴァルト・クイケン)
    ヴィヴァルディ リコーダー協奏曲二長調RV.428「ごしきひわ」
         (アルト・リコーダー / P.F.ヘイヒェン)
    J.S.バッハ 「音楽の捧げ物」BWV.1079より 3声のリチェルカーレ
         (チェンバロ / B.アラード)
    ヴィヴァルディ ピッコロ協奏曲ハ長調RV>444
         (ソプラニーノ・リコーダー / P.F.ヘイヒェン)
    J.S.バッハ 管弦楽組曲第3番二長調BWV.1068(弦楽合奏版)
    ヴィヴァルディ ヴァイオリン協奏曲集「和声と創意の試み」作品8
            「四季」
   (アンコール J.S.バッハ 管弦楽組曲第3番より「ジーグ」)



どれも良く知られたおなじみの曲ばかり。
ちょっと、物足りないかな・・・という気がしないでもありませんでしたが、なんといってもあのクイケン率いるラ・プティット・バンドです。きっと何かサプライズがあるはずです。
何より今回は「ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ」という私には始めての楽器での演奏会なのですから。
ヴィオラよりちょっと大きくてチェロより小さいヴィオロンチェロ・ダ・スパラ。
楽器の大きさに比べて、心なしボウが短いようにもみえます。
そして肩からベルトで吊って演奏されるのですが・・・
そう。ちょうどその昔の田端義男さんのイメージ・・・なんて言ったら怒られますよね。(笑)

第一曲めからいきなり気になるヴィオロンチェロ・ダ・スパラによるバッハの無伴奏チェロ組曲!
もちろんシギスバルト・クイケンのソロで。
固唾を呑むかの如く、しんと静まり返った会場に流れ出したスパラの音色は、と言えば・・・
その響きは思ったより小さく、低音においてはチェロに比べてよりちょっと高いかなという感じです。
やや乾いた感じの音色、古雅という言葉がぴったりのゆかしい響き。
無理のないボウイングで伸びやかに歌いだすバッハ。
変に肩肘を張ったところのない無垢なバッハとでも言えばよいのでしょうか。
無心にスパラを奏でるクイケンは大切な宝物のように一つ一つの音に魂を込めていきます。

大きく暖かな海を思わせるプレリュード。
寄せては返す音のうねりは、心のひだの奥深くまでひたひたと染み透ってきました。
立ち上がるの音の美しさ、終わっていくときの繊細さ。
かろやかなクーラントやメヌエットはどちらかと言えば潔い演奏です。
その対比もなんだかとても気持ちが良い。
豊穣な音の広がりという点からすればスパラはチェロに比べてずっと慎ましやかで、低音楽器としてはすごく繊細ですが、表情は豊かで雄弁です。

魂から魂へと共振して響いてくるかのようなスパラの響き。
古くて新しい楽器(再発見された、よいう意味で)、ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ。
弓と弦、という二つの異なる物体が接して初めて音が出る弦楽器。
(ピアノも含め)打楽器もふたつのものが接することで音が出るという点では弦楽器と同じなのですが、叩くのではなく摩擦が生み出す音色のなんと心地よいこと・・・


休憩を挟んで第2部、最後の曲ヴィバルディの「四季」
クイケン氏自らがこの曲について書かれていたことの中で印象に残った言葉がありました。
曰く、かつてのほとんどのバロック音楽の作曲家によるコンチェルトは、「一つのパートには一人」で演奏されるものと考えられていること。
それはヴィヴァルディの「四季」にあっても例外ではありません。
一方、私の頭の中で鳴っている「四季」は、かつてのイ・ムジチ&フェリックス・アーヨのまといつくまでの華麗な響きでした。
私にとってのバロック音楽はこのイ・ムジチから始まったといっても過言ではありません。
イ・ムジチの編成に新鮮さはあっても、一つのパートに一人の演奏を実現するには、私たちの耳はあまりに厚い響きに慣れすぎていたのでしょうし、演奏者の側にもこうした発想はなかったと思います。

翻ってクイケンさんのコンセプトは、低音弦の補強としてのヴィオロンではなく、パートに唯一のヴィオロン・チェロとして、ビオロン・チェロ・ダ・スパラを復活させるということにありました。
同時に、『今日(こんにち)世界各地の音楽界においてあまりに頻繁につかわれすぎ、乱用されていることにより、その価値を貶められてしまっているヴィヴァルディの「四季」を『再発見』してほしい』という切なる願いによるプログラムでもあったのです。


私の好きなト短調の夏は意外とさらりとした演奏。
意外だったのは「冬」。
しんしん凍てつく冬の寒さ、凛と張り詰めたような冷気を感じさせる緊張感に満ちた演奏です。
なかでも有名なラルゴ。
始まったとたんに、「は、速い!」
今まで私が聴いたどのラルゴより速いテンポで演奏された調べは、緻密な冬の空気と引き締まる冷たさの中に輝く日差しのように流れていきます。
新鮮な装飾音も印象的な、清潔で冴え冴えとした透明感にあふれた響きです。
ヴィオロンチェロ・ダ・スパラの響きには、重力から開放されたような自由な軽さがあってそれがいっそうのこと、アンサンブルに不思議に乾いた明るさというか透明感を与えていたようにも思います。



画像

コンサート終了後、サインをしていらっしゃる面々。CDを買わなかった私は「見てるだけ〜」



まるで真空状態のように物音ひとつしない会場。
ぴんと張り詰めたような静寂。
こんなにテンションの高い演奏会は久しぶりでした。
ふっと気がつくと、自分の気持ちが「あちら側」に飛んでいってしまってる・・・と言うか。
一瞬、魂が音楽の中に取り込まれてしまうような錯覚を覚えたすばらしい演奏会でした。
私たちの後方の席から何度も上がった声は、「ブラヴォー!!」ならぬ「よぉ〜し!よぉ〜し!!」
年配の方でしょうか。
ブラヴォーより親身な感じで、これもまた良し!




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コメント(16件)

内 容 ニックネーム/日時
ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラを復元されたディミトリーパディアロフ氏の工房が東京郊外にあるんですね。お聴きになられたクィケン氏に依頼されて製作に取り組んだそうです。この経緯が「レコード芸術」の6月号に詳細が掲載されていますのでお読みになると良いでしょう。寺神戸亮さんも最初に依頼されたお一人だそうです。いつの間にか音楽界もモダンと古楽の両方を聞く時代になって来たのですね。私も古楽の勉強を始めた演奏家のご縁でじかに聴く機会が増えて来ましたので、少しアーノンクールの「古楽とは何か」という本あたりから読んで、しっかり聴いて行こうかなと考えています。「愉悦の古楽器演奏」という特集号なのでこの機会に是非どうぞ・・・それにしても素敵なコンサートをお聴きになられて羨ましいです。明日はビルスマのバッハでも聞いてみようかな!
sonnet
2008/05/29 00:07
 おはようございます。
 プログラム1曲目にある無伴奏「チェロ」組曲は、シギスヴァルトさんがお弾きになったということでしょうか?
 だとすると、これは、ちょっとすごいことですね。いかがでしたか?
 肩掛けチェロはCDで聴きましたが、それで聴く限り、おっしゃるとおり古雅で繊細な音色ではあるものの、言われなければ、わたしには、わからないかもしれません。
 肩掛けチェロのいいところは、その演奏形態のおもしろさと、
 何よりも、ヴァイオリニストの弾く無伴奏「チェロ」が聴ける、ということにつきると思います。
 なんと来月、寺神戸さんの無伴奏チェロがリリースされるそうです。
 一人のアーティストによる無伴奏ヴァイオリンとチェロ両方が聴ける時代が来たわけです。(チェンバロ版やギター版はありましたが)
 今は心静かにリリースを待っているところです。
 
 それにしても、「ばたやん」ですか・・・・?(笑)
Nora
2008/05/29 09:16
ほかのブログにもこのコンサートの記事がありましたね!うらやましいです。私がはじめてラ・プティットバンドを知ったのは1981年頃だったと思います。初めて聴いたのはリュリの「町人貴族」の曲でした。当時は曲名までは知らなかったのですが。
Cecilia
URL
2008/05/29 16:06
◇sonnetさん

いつもながらすばやいコメント、ありがとうございます。
何か書いてすぐ反応があると嬉しいものですね。(そう言いながらsonnetさんのブログにはここのところご無沙汰しています。本当にすみません)
「レコード芸術」の6月号、コンサート当日立ち寄ったクラシックCDの店頭にあったのをちらりと横目でにらんでおりました。古楽の特集でしたね。
もうそろそろ6月になってしまいますがまだ書店にあるでしょうか。問い合わせてみます。ありがとうございました。
sonnetさんはアーノンクール来日の際も足をお運びになられたのですよね。古楽関係の御友人も多いのですね。うらやましい限りです。
またいろいろ教えていただけることを楽しみにしています。
aosta
2008/05/29 20:49
◇Noraさん

お久しぶりです♪
ブログをアップしたときは、何だかとても疲れていてぼんやりとした内容のままアップしてしまいましたが、今日若干手を入れましたので、再読していただければ幸いです。とはいえ、Noraさんのご期待に沿えるような内容ではありませんのでご容赦!!

>なんと来月、寺神戸さんの無伴奏チェロがリリースされるそうです。

この情報も件のCD屋さんで入手いたしました。
開場まで随分時間がありましたので、頼んであったCDの受け取りを兼ねて出向いたのですが、これからラ・プティット・バンドを聴きに行くという話をしたら、すぐ寺神戸さんの新譜について教えてくださいました。sonnetさんのコメントにもありましたように、古楽とモダン、同一の演奏家によるヴァイオリンとチェロの無伴奏を楽しめる時代名のですね。なんだかため息・・・

ばたやん、Noraさんがご存知で安心いたしました。(笑)
クイケンさんごめんなさい!!
aosta
2008/05/29 21:14
 aostaさん、人は羨ましくても心が高鳴るのだと今感じています!
「冬」のラルゴですって!?以前、こちらにも書かせていただきましたが、大好きな曲です!!古楽器で弾く「冬」はどんなにか、美しく乾いた音色の中にある厳かな重厚感に溢れていたのではないかと想像して、悶絶しています。
この演奏会を知ったのはつい最近でした。聴きに行けなかったこと、悔やまれます。
素敵な演奏会のお話をありがとうございました。
alex
2008/05/29 21:22
◇Ceciliaさん
 コメントありがとうございました。

>初めて聴いたのはリュリの「町人貴族」の曲でした

「町人貴族」、確かモリエールでしたっけ?
リュリ、モリエールとくれば思い出されるのは映画「王は踊る」!
あの音楽を担当したのも古楽の大御所、ムジカ・アンティカ・ケルンでした。
ル14世をめぐるリュリとモリエールそれぞれの葛藤。モリエールの無残な最期が目に焼きついています。あの映画の中でも「町人貴族」が演奏されていましたね。20年前からラ・プティット・バンドの演奏を聴いていらしたなんて!!まだまだお尻が青いaostaです(?)
aosta
2008/05/29 23:46
◇alexさん

そちらに足を向けられないほどご無沙汰しておりますのに、コメントいただき、本当に嬉しいです。
そうでしたね。alexさん、ラルゴがお好きだったこと思い出しました。
ピリオド楽器って乾いた音色がするものが多いように思います。
乾いているのですが、干からびてはいない、むしろ鄙びて典雅に響いてきます。
物たちの輪郭がはっきりと見えてくる澄んだ「冬」の空気を感じるような素晴らしい演奏でした。
少しづつ元気が回復してきましたので近いうちにお邪魔させてくださいね。
aosta
2008/05/29 23:57
ラ・プティット・バンド、私も聴きたかったです。最近、クイケン兄弟の音楽の捧げ物や、ラ・プティット・バンドのブランデンブルク協奏曲などを聴いていただけに、ショック。もう関東での公演はないんですね……。「ラルゴ」が速いと書いておられますが、意外と古楽を演奏される方々のテンポは速いですよね。そういう驚きをブランデンブルク協奏曲で感じたことがあります。
Shushi
URL
2008/06/01 14:47
◇Shushiさん

ご無沙汰しております。コメントありがとうございました。
ラルゴ、速かったです。(笑)
颯爽とした緊張感のある演奏でした。
軽やかさと弾みを感じる心地良い音楽でした。速い演奏と言えば、しばらく前にトーンハレのベートーヴェンを聴いてその速さに度肝を抜かれましたが、これもまた非常に密度の高い演奏でした。テンポ感が違うと聴こえてくるものも変わってきますね。

aosta
2008/06/02 08:13
 おはようございます。
 クイケンの弾く無伴奏の様子をくわしく書いていただき、ありがとうございました。雰囲気がとてもよく伝わってきました。
 わたしも今週スパッラのことを書きますので、リンクさせていただきたいと思います。ご報告まで。
Nora
2008/06/05 09:22
☆Noraさん

おはようございます。
クイケンの無伴奏、一応書いては見ましたが、いつものことながら文章にするのは難しいですね。音楽は目に見えるものではありませんし、その場限りで消えてゆくものです。記憶も同じです。感動は表現しようとすればするほど作り物めいてきます。すこしでも雰囲気が伝わったとすれば嬉しいのですが。
Noraさんがお書きになるスパラの記事、楽しみにしています。
リンクしていただければ光栄です。
それから、もうご存知かもしれませんが、明日7日、18時から横浜歴史博物館でバロックオーボエ vs. リコーダーのコンサートがあります。本村睦幸さん、山岡重治のリコーダーにバロックオーボエが三宮正満さん、ガンバが平尾雅子さん、チェンバロ下山真理子さんという豪華な顔ぶれ♪。フィリドールやテレマン、シックハルトなど。
急な話ですが御都合がつくようでしたらぜひ。


aosta
2008/06/06 08:02
スパッラを復元されたディミトリー・パディアロフさんが、6月2日と4日に目白バロック音楽祭でバッハの無伴奏4,5,6番を公開演奏(目白聖公会)をなさったとか!知人に聞いて、さほど遠い場所でもないのに事前に情報をキャッチ出来なかったのを少し残念に思っています。野次馬根性にせよその楽器の音を聴いてみたかったです。MXテレビ(ネット上)でほんのちょっとだけ、彼がスパッラを弾いているシーンを見ることが出来ます。
sonnet
2008/06/06 21:15
☆sonnetさん

おはようございます。パディアロフさんの演奏会があったのですか?!
それも目白バロック音楽祭で!
毎年この音楽祭に行きたいと思いつつ果たせずにいます。
無伴奏の5番はあの曲集のなかでも特に好きな曲です。私も聴きたかったな。
mxテレビで我慢いたしましょう(涙)
aosta
2008/06/07 06:09
バディアロフさんのスパッラに憧れて、楽器を自作しようと挑戦中です
okusan
URL
2008/06/29 19:04
今日の記事に書いたのですが、ラ・プティットバンド、存亡の危機にあるそうです。
http://santa-cecilia.blog.so-net.ne.jp/
他のブログの方から伺いショックを受けています。
Cecilia
URL
2009/02/10 08:30

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