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zoom RSS 「ヴィーナス」 縄文の造形 (U)

<<   作成日時 : 2008/08/31 17:16   >>

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尖石(とがりいし)縄文考古館の2000点を超える展示品の中でもひときわ目を引くのが、今から約5000年前の縄文中期の遺跡から出土した「縄文のヴィーナス」呼ばれる土偶である。


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昭和61年、茅野市棚畑遺跡からほとんど完全な形で出土したこの土偶は、ほどなく国宝指定され、平成12年に同じく茅野市中原遺跡から出土した、重文「仮面の女神」とともにこの考古館でもっとも注目を集める縄文の遺物だ。
この時代、通常土偶は病や不幸の一種の形代(かたしろ)として、最初から壊される目的で作られたと言われている。
したがって、この「ヴィーナス」がほぼ完全な状態で出土したことは、むしろ異例なことなのだと聞いた。



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頭部はと見れば、これは頭髪なのだろうか、それとも何かを被っているのか、左右でアシンメトリカルな美しい曲線がゆるゆると渦巻いている。
装飾的な要素はと言えば、まさに頭部のこの意匠だけなのだ。
私たちが知っている土偶の多くが、体の全面に装飾的な模様が施されているのに対して、このシンプルさは何に由来するものなのだろうか。
ためらいなく引かれたかに見えるが、その実、熟慮の末に描かれたのであろう複数の曲線が作り出す、循環するような不思議なイメージは、何かの象徴なのか、それともメッセージなのか
混沌と秩序・・・
ミクロとマクロ・・・
その双方を同時に喚起する、エネルギーに満ちた循環のイメージだ。

そして注意深く見るならば、土偶の上半身の微妙な輝きに気がつく。
光線の当たり方や、見る角度によって表情を変えるそれは、粘度の中に意図的に混ぜ込まれた金雲母の輝きだ。
焼成されることで輝きを増すと言う金雲母は、土器・土偶作りに際し、日常的に使われたものではなかった。
むしろ、特別な場合にのみ特別な意味を持って混ぜ込まれたと思われるこの雲母の煌きとともに、破壊されることなく完全体で出土したという不思議が重なる。


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後ろに回れば思いがけずも愛らしい曲線となだらかな面で形作られたハート型の臀部。
背中から腰、腰からお尻へと続く柔らかな曲線の緩やかさ、しなやかさ。
デフォルメされた下半身はどっしりと安定感に満ちた平和な充足がある。
私が連想するのはモディリアニの描く裸婦の豊満なまでの腰だ。
たとえばカリアティード。平面と立体の差はあるが、シンプルで簡潔な表現は良く似ている。
縄文のヴィーナスほどではないにせよ、豊かに張った腰のフォルムは従来のモディリアニのイメージをある意味で裏切るものでもある。
瞳のない一見無表情な多くの肖像画も含め、彼の作品がその初期においてアフリカの原始彫刻や絵画に大きな影響を受けたことは良く知られている。
縄文のヴィーナスにも、モディリアニがアフリカの原始美術に見たであろう原初的な単純さ、明快さは共通しているが、全体から受ける印象は、プリミティヴというよりはむしろ洗練であり、原初的というよりモダンではなかろうか。


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見ての通り、ヴィーナスは妊娠している。
地母神として、また豊穣を象徴する信仰の対象であった所以だ。
しかし豊満な下半身に比べ、胸部は幼い少女のように意外なほど慎ましやかだ。
その表情もまた童女のようにあどけない。
このアンバランスが、この作品に不思議な魅力を与えている。





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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
ガラスのケースの中で静かにたたずむこの像からすごいエネルギーを感じます。縄文の人がどういう思いでこの像をつくったのか、思いがはてしなくひろがります。
森の生活
2008/09/07 17:57
この埴輪はどうせ生まれるのなら双子や三ツ子でも生まれてこいというような祈りを超えた喜びが伝わってきます。喜びの発散とはこういうようなものなんですね。
イエローポスト
URL
2008/09/08 07:08
◇森の生活さん

縄文のヴィーナス、大きさは27センチですが存在感は圧倒的ですね。
隣に展示されている「仮面の女神」とは時代的に1000年古いようですが、「仮面の女神」の持つ暗く濃密な呪術的雰囲気とは違った穏やかさというか明るさがあるような気がします。
もちろん縄文のヴィーナスとて何かの呪術的な目的で作られたものであることに違いはありませんが、「仮面の女神」を見る限り、「ヴィーナス」に見られる縄文中期の開放的なおおらかさが1000年後には失われてしまいました。
文化の隆盛期と衰退期という違いだけでは説明できないものを感じます
またこれだけのものを作り上げた縄文という文化が、私たちの住むこの八ヶ岳山麓に花開き当時の縄文文化の中心であったことに不思議な感慨を覚えます。
aostaa
2008/09/08 14:53
◇イエローポストさん

妊娠している女性をかたどった土偶は明らかに地母神的というか、豊穣と多産の象徴であったのでしょうね。
著しく発達した豊満な腰は縄文の人たちの祈りや願いが形になったのだと思います。それにしても、思い切ったデフォルメですよね。
aosta
2008/09/08 20:01
この子は現代でも、どってもチャーミングです。
そのままイラストになっていますね。違和感ナシです。
 
Papalin
2008/09/08 22:02
◇Papalinさん

コメントありがとうございます♪
そうなんです。
この子には不思議な魅力と力がありますね。
このヴィーナスを作り、大切にしていた縄文の人の思いを想像すると、何千年という時を越えて、今の時代を生きる私たちと同じ喜びや哀しみに、笑ったり涙したりしていたのでしょう。
何だかとても近しく感じられてきますね。
aosta
2008/09/09 22:33
こんにちわぁ
田舎暮らしのルギーヤです。
写真がとてもお上手でやさしさと迫力を感じています。
ふるさと情報館HP〔★一斗缶で野焼きした手作り縄文土器〕
http://bbs1.as.wakwak.ne.jp/22178/blog/blog.cgi/c6/a200808301932.htm
取材内容です。尖石考古館を紹介しています
設置してある「田舎暮らし」の板をクリックいただければ
ランキングが上がりますので応援よろしくお願いいたします。



うし
2008/09/10 12:41
◇うしさん

えっ?ルギーヤさんではなかったのですか(笑)?
おいでくださってありがとうございます。
ふるさと情報館のHP、拝見させていただきましたよ♪

>写真がとてもお上手で・・・

ありがとうございます、と言っていいものやら。
実はこの写真、日を変え時間を変え、何回も何回も撮りなおしたんです。
ただ綺麗に撮るのではなく、土器や土偶の持つエネルギーみたいなものを撮りたくて。誰もいない時間を見計らっては、パシャパシャ(笑)

aosta
2008/09/10 20:33

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