フォーレ ラシーヌ雅歌


 目を閉じて聴いていると、開いた両の手のひらに、天の高みから密やかに光る何か暖かいものが降り注いでくるような美しさ。
柔らかなオルガンの響き、明るく穏やかで平安に満ちた曲調の中に敬虔な祈りがあります。

 本来「雅歌」とは、旧約聖書に収められたソロモンと乙女との愛の歌。
フランスの詩人にして古典悲劇の大家であるラシーヌによって書かれたこの「雅歌」は、男女の愛というより、敬虔な信仰に基づく神への愛、神への賛歌。
その意味では、「雅歌」と言うより、ダビデによって書かれた(第42編から72編)「詩篇」に近いのかもしれません。
 
 フォーレの声楽曲における最初の作品(音楽学校の卒業作品として作曲されたもの)と言うことですが、すでに後のレクイエムを予兆させる、清明で内省的な美しさに溢れた曲です。
心が乾いて痛いとき、私はこの曲を聴きたくなります。
ささくれた心をそっと包んでくれる、柔らかであたたかな慰めをもらうために。


   「ラシーヌ雅歌」
     
       いと高きところの御言葉、
       われらの唯一の希望、
       天と地とのとこしえなる日。われらは静かな夜のしじまを破る。
       崇高なる神よ、その聖なる眼差しをわれらに向けたまえ。
       汝の力強き恩寵の炎をわれらが上に振り注ぎたまえ。
       全ての苦難が汝の声の響きの前に消え去らんことを!
       汝の戒律を忘れせしめる力なき魂の眠りを消し去りたまえ
       おお、キリストよ、汝を祝福するためにここに集まりし
       この忠実な僕に、御恵みを与えたまえ。
       その僕が汝の不滅の栄光のために捧げる歌を聞き、
       汝への捧げ物から神への帰依に満たされしを受けたまえ。

ラシーヌ雅歌(フォーレ:合唱&歌曲集)ラシーヌ雅歌(フォーレ:合唱&歌曲集)
ラシーヌ雅歌(フォーレ:合唱&歌曲集)

この記事へのコメント

2007年09月18日 10:45
今この曲を聴いていて、歌詞を知りたい・・・と検索したところ、偶然aostaさんの記事に・・・!
この記事も前に拝見させていただいていましたが。
ささくれた心を優しくつつんでくれる曲ですよね。
大好きです。
もちろんレクイエムも好きです。
2007年09月20日 07:49
◇Ceciliaさん、おはようございます。

こんなところにまでお出で下さいまして、ありがとうございます。
でも、とても嬉しいです。
「ラシーヌ賛歌」本当にいいですよね。
暖かかく、敬虔で優しい・・・

そちらに勝手にTBさせていただきました。
ご迷惑でありませんように。
2007年09月23日 14:51
この曲、学生の時に歌いました。
とてもきれいな曲で、大好きです。
時々、最初の歌いだしの所、口ずさんだりしています。
でも、訳は初めて知りました。こんな意味だったんですね。
あの頃は、何も考えずに歌ってだけいました。思えば、学生の本分なんてどこにもなかったです。そんな事を思い出しました。
2007年09月24日 18:28
◇沙羅さん、こんばんは。

まさかここでお目にかかれるなんて(笑)
とてもうれしいです。

フォーレの合唱曲、歌曲、みんな大好きです。
「パヴァーヌ」も合唱つきが断然いい!と思っています。

去年の夏、原村でフルートの合宿がありその最後の発表会で演奏されたのがこの「ラシーヌ雅歌」でした。
20人近い人数で演奏されたフルート・アンサンブルでしたが、これもとてもよかったです。

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    Excerpt:  フォーレの「レクイエム」が無性に聴きたかった。 どちらが好きと問われれば、モーツァルトのレクイエム、と答えるかもしれない。 だがしかし、フォーレでなければならないときがある。 Weblog: 消えがてのうた racked: 2007-09-18 15:18