シャルパンティエ 「真夜中のミサ」 4声合唱、リコーダーと弦楽器のための

 クリスマスはあわただしく過ぎていきました。
盛りだくさんのプログラムに加えて、娘の洗礼式もあり、私が何を準備すると言うわけでもないのですが気持ちが落ち着かないままアドヴェントが過ぎ、23、24、25日と連日聖歌隊で歌い、ブログに手をつける余力がありませんでした。
 時期をはずしてしまうと、今更クリスマスの記事でもないかな・・・と弱気になっていたのですが(笑)、CDラックを物色していた私の視界に飛び込んでできたのがこの一枚。

マルカントワーヌ・シャルパンティエ「真夜中のミサ」H9
< 4声合唱、リコーダーと弦楽器のためのクリスマスのミサ曲>
        マルタ・ミンコフスキー指揮 ミュジシャン・デュ・ルーブル合唱団
                       
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「王は踊る」という映画をご存知でしょうか?
あの「太陽王ルイ14世の時代、一世を風靡したジャン・バティスト・リュリ(1632~1687)をモデルとした映画です。
当時、音楽を指揮をするにあたって使用したのは、現在のようなタクト(指揮棒)ではなく、固くて重い杖のようなものでした。
指揮者は、この杖で床をたたき、リズムを取って「指揮をした」のです。
リュリも当然そのようにして指揮をしていたわけですが、運が悪かったことに、その杖で自分の足を突いてしまい、その傷が悪化して壊疽でなくなりました。
男女関係のスキャンダルも多く、映画にもなるくらい波乱に富んだ人生だったようですが、ルイ14世の寵愛を一身に受けた彼の権威は絶大で、シャルパンティエ等、他の作曲家が宮廷で活躍する機会はまったく与えられませんでした。

 宮廷音楽家への道を閉ざされたシャルパンティエ(1634~1704) は教会にその活動の場を求めました。
華やかで流麗なリュリの音楽とは一味違う、優しさとつましい美しさにあふれたシャルパンティエのミサ曲を聴きながら、あわただしく過ぎていった今年のクリスマスをもう一度祝いたいと思います。

その題名にもあるように、このミサ曲ではリコーダーの音色が、柔らかく優しく美しく、バロック・ギターの典雅な響きと相まってなんとも暖かなクリスマスの喜びに満ち溢れた曲となっています。
 カトリック教会では、(もしかしたらプロテスタント教会のなかでも宗派によっては)クリスマスの24日から25日にかけての深夜にミサが捧げられます。
貧しい大工の息子として小さな馬小屋で産声を上げた幼子イエス。
その誕生を真っ先に知らされたのは、貧しい羊飼い達でした。
何の贈り物を携えることもなく、ただ「救い主がお生まれになった」という喜びだけに胸を躍らせ、星に導かれ馬小屋を訪ねた羊飼いたちの素朴で純粋な信仰。
シャルパンティエのこの曲は、この羊飼いたちと同じ迷いのない真っ直ぐな祈り、偽りのない望みそのままです。
このシャルパンティエの曲には、10曲のノエル(フランスに伝わるクリスマスの歌)が使われています。
人々に歌い継がれたきた古くからのメロディーは、暖かで素朴な美しさに満ちています。

10曲のノエルの多くは舞曲風です。
ブーレがあり、ガヴォットがあり、メヌエットがあり、その旋律に乗って歌われる、典礼に基づいた歌詞との不思議な調和。
「グロリア」「クレド」の合唱の高貴さ、美しさ。


つつましやかなクリスマスの夜の平和。
この「真夜中のミサ」こそはキリスト誕生のお祝いに、相応しいように思えてなりません。



この記事へのコメント

Stanesby
2006年12月30日 01:13
> その杖で自分の足を突いてしまい、その傷が悪化して
> 壊疽でなくなりました。

大笑いしてしまいました。なんとも馬鹿な奴。
でも、それに至った状況が想像できて、ちょっと指揮者の哀愁を感じたりもしました。

おやすみなさい。
2006年12月30日 07:22
「王は踊る」
ルイ14世役のブノワ・マジメル、うっとりとする美しさでした。

慣れた動作であるはずの、杖で足を突いたのは
映画では 権力者でありかつ愛の対象としての王への
煩悶の積み重なりが手元を誤らせた、という解釈であったような・・・
(ただただ、王に見とれていたので、すこぶる怪しい記憶ですが)

「真夜中のミサ」
題名もすてきですね。
aostaさんの記事を読むと、みんな聴いてみたくなります。
2006年12月31日 14:28
「王は踊る」知りませんでした。
太陽王のことと宮廷音楽家のことは少し知っていても、宮廷に音楽については全然です。
ですからとても読んでいて面白かったです。
ミサ曲も全然想像がつかないのです。ノエルが使われている由、バッハ以前でしょうからどんな曲だったのでしょう。興味がつのります。
2007年01月01日 15:00
◇Stanesbyさま

Stanesbyさんがおなかを抱えて笑っていらっしゃるところが、目に浮かびました。わらっていただけてよかったです。
もちろん、それが目的ではないのですが、そして笑ってしまったのではリュリに対して申し訳ない気もいたしますが、笑い収めとしてはちょうど良かったでしょうか。

リュリ、ブログ本文にも書きましたが大変「恋多き人」でした。
困ったことにその対象が女性に限らなかったことです。
美しい男性もまた、彼の愛の対象でした。

太陽王ルイ14世。
王笏をもった全身像で知られる美貌の絶対君主。
彼に身も世もない恋をしたリュリ・・・
なにも、ホモセクシュアルを良しとするものではありませんが、対象が異性であれ、同性であれ、恋の苦しみは同じでしょう。

結果だけを見れば「笑ってしまう」お話なのですが・・・



2007年01月01日 15:07
◇Suzukaさま

コメント、ありがとうございます。
ブノワ・マジメル、すてきでしたね。
豪華絢爛たる衣装にも負けず、光り輝く超然としたその姿。
Suzukaさまならずとも、見惚れてしまいます(笑)

おまけのひとこと。
「仮面の男」のガブリエル・ハーン。
ため息!美しい!男の中の男!!
マジメルも美しいけれど、ハーンの美しさときたら・・・・・・・・
2007年01月01日 15:11
「真夜中のミサ」よろしければ聞いてみてください。

おなじくシャルパンティエの「テ・デウム」とのカップリング。
アルヒーフのニューベスト50の中の一枚。
1800円なり。
2007年01月01日 16:41
「仮面の男」
わたしは絶対、アトス!
マルコヴィッチが、追っ手に振り向くときの、あのシーンがだいすき!
ポルトスの、あの後姿も、捨てられませんけどね。

2007年01月02日 07:14
◇Suzukaさま

アトスときましたか(笑)。
「三銃士」を読んで以来(つまり小学生のころから)、私もアトスが好きでした。
冷静沈着、知的で思慮深い大人として憧れていました。
マルコヴィッチというキャスティングは私には意外でしたが、映画の中で見たときは何の違和感もありませんでした。

>追っ手に振り向くときの、あのシーン・・・
私が思い出したところと同じだといいのですが。
仰るとおり、毅然として凛々しく胸を突かれるようなアトス表情であったと思います。
ポルトスもねぇ。
あの馬小屋のシーン、わすれられません。
2007年01月02日 07:32
◇tonaさま

お返事前後してしまいました。
ルイ14世はバレエを愛し、自ら皆の前で踊ったことでも知られていますね。
そしてその才能もなかなかだったとか・・・
バレエに音楽はつき物。
リュリ他の宮廷音楽家たちが重用されたのもうなずけます。
 また、リュリと同じくバイセクシュアルでもあったようです。
フランスだけでなく文化の爛熟期には良く見られることなのでしょうが、恋の駆け引きに権力争いが絡むと、外見がいいだけでは生き残れません。
才能に恵まれ頭も良く、権謀術数に長けた美貌の人物だけが表舞台で活躍したのでしょうね。
そしてその「男たち」を背後で操った女たち。

我等がシャルパンティエには少し縁遠い世界であったかもしれません。
彼のこのミサ曲には、ふと口をついて出てくるような美しく愛らしい旋律が出てきます。
シンプルなそのメロディはとても覚えやすく、崇高でありながらも、いわゆる「宗教曲」の気難しさはありません。


2007年10月30日 13:43
これから記事を書く予定です。
今フランスのキャロルにはまっています。

ここを見て又「王は踊る」を見たくなってしまいました!

シャルパンティエのテ・デウムH.146が大好きです!
Cecilia
2007年10月30日 14:15
リンクさせていただきました。
2007年10月31日 09:10
◇Ceciliaさん

昨日は長々とコメントいたしましてすみませんでした(笑)
シャルパンティエの記事を覚えていてくださったのですね。
Ceciliaさんの記事、楽しみです。
「王は踊る」、私はCDも買ってしまいました。
華やかで勇壮、煌びやかなリュリの音楽もなかなかです。

テ・デウムのH.146・・・
もう一度聞いて確かめて見ますね。
テ・デウム、私も好きで聞いているのですが、Ceciliaさんのようにしっかりおぼえていません(笑)
2007年10月31日 09:13
◇Ceciliaさん

>リンクさせていただきました。

いつもありがとうございます。
ラシーヌのアクセス、ここの所多いのも、Ceciliaさんがリンクして下さったからかしら、と思います。本当にうれしいです。
2007年11月15日 11:01
 おはようございます。
 おもしろい記事(+コメント)をトラックバックしてくださり、ありがとうございます。
 ルイ14世、いかつい王様がタイツをはいてバレエを踊るのを想像してましたが、「美貌の王」だったのですね。
2007年11月16日 07:32
◇Noraさん

ご丁寧にありがとうございました。
シャルパンティエというより、リュリとルイ14世の話題で盛り上がってしまいました(笑)。
太陽王、王尺を持って毛皮のケープをまとった肖像画のイメージが強いですね。壮年期の絵でしょうか。
あの感じでは「王は踊る」と、にわかには繋がらないかもしれませんか、若い頃は確かに美貌で知られていたようです。

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