どんぐり

昼下がりの穏やかな日差しの中、雑木林を歩いていると、不思議な音がしているのに気がつきました。

空は晴れているのに、ぱらぱらと、まるで雨の落ちるような音です。
あぁでも、雨の音より乾いた感じの音でもあります。
そして、私のすぐ足元にもぱらぱら、ぱらぱらと・・・・

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そのとき、一郎は、足元でパチパチ塩のはぜるような、音をききました。
びっくりして屈んでみますと、草のなかに、あっちにもこっちにも、黄金(きん)色いろの円いものが、ぴかぴかひかっているのでした。
よくみると、みんなそれは赤いずぼんをはいたどんぐりで、もうその数ときたら、三百でも利かないようでした。わあわあわあわあ、みんななにかいっているのです。


なんと、まるまる太ったどんぐりたちが、先を争うように落ちてきます。
長細いどんぐり、まん丸などんぐり。
帽子をかぶったもの、帽子がはずれてしまったもの。
楢(ナラ)の木のどんぐり。樫の木のどんぐり。
どのどんぐりも、葉っぱを落とした梢の下で、小さな陽だまりの光を反射するように、ぴかぴか光っています。

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ひゅう、ぱちっ。
馬車は草地をはなれました。木や藪がけむりのようにぐらぐらゆれました。
一郎は黄金(きん)のどんぐりを見、やまねこはとぼけたかおつきで、遠くをみていました。
馬車が進むにしたがって、どんぐりはだんだん光がうすくなって、まもなく馬車がとまったときは、あたりまえの茶いろのどんぐりに変わっていました。

秋の日が翳った林の中は、ぼんやりした夢のような時間だけが過ぎていきます。

                              本文中引用 宮澤賢治「どんぐりと山猫」


この記事へのコメント

2007年10月25日 19:05
よく遊びに来ていたリスが来なくなりました。森の中においしいものがたくさんあるのですから無理もないか・・・リスにとってはうれしい森の贈り物です。
2007年10月25日 21:21
いい写真ですねえ~、秋の風情がたっぷりです。
どんぐりってツヤがあって、フォルムもまるっこくて可愛らしくて
帽子をかぶってるのもあれば脱いでいるのもあったりして、飽きませんね。
beingreen
2007年10月25日 21:57
宮沢賢治の「どんぐりと山猫」、なるほどこういう風景が実際にあるんですね。
lavie
2007年10月25日 22:18
どんぐり・・・大好きです。
落ちていたら拾わなくちゃ損!って感じで拾いまくります。
特にくぬぎどんぐりは貴重!ドングリの王様だと思ってます。
椎の実には、また格別のおいしさが・・・

ドングリの背比べではないですが、「どんぐりと山猫」のどんぐり談義には、笑いが出ますね。
今また、宮沢賢治が見直されているように思うのですが、この世の風潮をみると分かるような気がします。農学者でもあったんですね。
イエローポスト
2007年10月25日 23:58
アラレが降るような落ち方と宮沢賢治が表現しているようですが、岩手の秋や奥深い山間でしたらいっきに寒さがおそってくるのでそういう音がきっとするのでしょう。
近くの公園でもいろんな種類のどんぐりが落ちていてその数個を拾ってきた玄関の棚においてあります。棚が揺れるたびのころころ動いています。
このまま玄関がよいのか、地面にかえすのがよいかどちらがよいでしょうか。中に栃の実が一個だけ混じっていました。
実といえばピラカンサスの真っ赤な実がたたわに枝がしなるように欲張りなものつけ方です。銀杏の実は朝早くから探している人がいました。
 むかごの実を茹でてたべたら小さいジャガイモの味わいで生まれて初めてでした。公園にアメリカのようにリスでもすんでいればもっと楽しい木の実の食べたかが見られることでしょうに。
カルフォルニアの火事では動物たちは右往左往していることでしょう
2007年10月26日 05:40
◇森の生活さん

おはようございます。
自分が食べたり越冬用にひそかに蓄えたりと、リスたちは大忙しですね。
去年は随分リスを見かけたのですが、今年はあまり見かけません。
食べ物が豊富であまりでてこないのでしょうか。
野生の動物たちもためにも、自然が当たり前に巡って欲しいと心から思います。
2007年10月26日 21:33
もう秋が来てますね~
どこぞに迎えに行きますかね!
2007年10月27日 06:57
◇うさみさん

おはようございます。
どんぐりのツヤ、手触り、そしてあの丸っこい形、懐かしいというか、見飽きませんね。
ついつい拾って帰りたくなります。
机の上に並べて、さてどうしようかな・・・と考える時間も好きです。
結局はマツボックリその他と、そのまま転がっていることが多いのですけれど(笑)
2007年10月27日 07:03
◇beingreenさん

コメントありがとうございます。
林の中はどこもこんな風にどんぐりだらけ。多分、どんぐりの木の多い林なのでしょう。実が落ちるまで何の木か気にもしていませんでした。
もう少しすれば完全に落葉した雑木林で、どんぐりたちは枯葉のお布団に包まって大きな木蔭の夢でも見るのでしょうか・・・
2007年10月27日 07:22
◇lavieさん
 おはようございます。

>落ちていたら拾わなくちゃ損!

私も同じですよ。
なぜでしょうかね、どんぐりを見ると子供に戻っちゃうというか、なんだか自分の中で忘れていた感覚が目を醒ましてくれるような、不思議な魅力があります。気がつけば、手のひらにいっぱいどんぐりを拾っています。
くぬぎのどんぐりはどんぐりの王様!
そうなんです。くぬぎのどんぐりは人目でそれと分かる独特の帽子を被っていますね。こちらでもあまり見かけません。

宮沢賢治、彼の生き方、彼の作品。彼のことば。とても好きです。
でも未だに分からないところも多くて・・・
だからこそ、魅力的なのですが。


2007年10月27日 07:24
◇lavieさん

椎の実ってどのように食べるのでしょうか。
栗のようにゆでればいいのかしら。
くいしんぼのaostaは、がぜん興味がわいてしまいました!!
2007年10月27日 07:34
◇イエローポストさん

栃の実!あの大粒でそれこそぴかぴか光る素晴らしい実ですよね。
栃の実は本当に存在感が合って美しい!!
手のひらを開いたような葉っぱの形も、薄いクリーム色の花、栃の木は本当に素敵ですね。

>このまま玄関がよいのか、地面にかえすのがよいか
 どちらがよいでしょうか

私も良く拾って飾っておきます。時間が経つにつれ、あのつやつやした皮にしわがよって光を喪ってしまうのを見ていると、やっぱりあのままにして置けばよかったかしらと、同じ後悔に襲われます。

むかご、こちらではゆでて胡桃味噌でいただきます。
でも家庭でというよりは、ちょっとお洒落な和食のお店で上品にいただく特別な物になってしまいました。
ちょっとホクホクとして確かにお芋の味がします。
2007年10月27日 07:40
◇ふくやぎさん

コメントありがとうございます。
こちらではもう霜が降りました。
八ヶ岳も冠雪し、すでに晩秋の気配です。
ときどき思い出したように明るい秋の日が帰ってきます。
赤や黄色に紅葉した山々が燃えるように輝きだします。
クララ
2007年10月27日 09:07
木の実談義…楽しいですね~。
秋一番に拾うのが栃の実です。つやつやで存在感があって。
それから、ミズナラの大きなドングリ。今はコナラのドングリがそれこそパラパラと落ちてきます。
小さなバケツを持って孫と拾います。♪どんぐりころころ♪と。

そうそう、ヤマナシの木も八ヶ岳にはあちこちにあります。
丁度実が落ちてくる頃です。食べられないのにとても良い香りがするんですよ。
山梨から岩手にヤマナシの木が贈られ、先日は岩手からギンドロの木が贈られました。
(ずーむいん八ヶ岳)に詳しく載っています。友達のブログです。
宮沢賢治ファン、八ヶ岳に多いですね。
lavie
2007年10月27日 17:48
え~、aostaさんは、椎の実 食べたことがないんですか?
都会育ちですか?
こっちでは、栃の実は拾ったことがありません。見かけないように思います。椎の実もそういうことなのかな?
椎は基本的には、生ですよ。
小学校帰りに、道沿いにちょっとした森があって、そこに入って椎の実を拾って、食べながら帰ってました。
煎ると香ばしいようですよ。ひまわりの種を煎って食べるのと同じ感覚かな?
拾ったら、ぜひ、食べてね。生もおいしいですよ。

NHKの朝ドラ「どんど晴れ」の舞台が岩手県だったので、宮沢賢治や遠野が何回か紹介されて、親しみがもてました。
2007年10月28日 08:20
◇クララさん

おはようございます。
昨日の雨は止んで、気持ちのいい秋晴れの朝になりました。
バケツを持ってどんぐり拾い・・・・楽しそうですね。
あんなに落ちていたら、小さなバケツならすぐにいっぱいになってしまうでしょうね。
やまなし、ズミとは違うのですね。こちらはお酒にはならないのですか?
賢治は何の実をイメージして「やまなし」と書いたのでしょう。
2007年10月28日 08:27
◇クララさん

続きです。
賢治が有名な童話「風の又三郎」を書くきっかけのひとつになったという「風の三郎岳」という山、クララさんはご存知ですか?もしかして、もう登られたとか・・・
クララさんが紹介してくださった「ずーむいん八ヶ岳」から知りました。
「風の三郎岳」、なんだか青い空を背景にすっくと立って風に吹かれている、爽やかな山を想像します。
2007年10月28日 08:28
◇lavieさん

>椎の実 食べたことがないんですか?

食べたことありません(悲)。
栃の実を除いて、本当に食べられる物だとは知りませんでした(反省)
ひまわりの種は学校の学級花壇から持ってきて食べたことがありますが、学校への生き返りも遊ぶ場所も商店街か住宅地。並木通りのケヤキぐらいしか知りませんでしたので、どんぐりを拾えるのは遠足の時だけでした。
小さな田舎の町でしたが、都会ではありません(笑)

>椎は基本的には、生ですよ。

生のどんぐり・・・
なんとなくリスさんの気分になりました。いがらっぽかったり、青臭かったりはないですか?
椎の実、椎の実!!!!探してみます。
皮はどうやってむくのかしら。学校帰りに拾って食べた、ということは、手でむけるということですよね。
lavie
2007年10月28日 21:04
昔(今もあると思いますが)整腸剤のビオヘルミンを飲みませんでしたか?飲むというより、かじるって感じで。
あの味なのです。椎の実は。
白く固いところもビオヘルミンそっくり。
正露丸は、苦くて、重症の時でしたが、ビオヘルミンは、ちょっとお腹が痛いな~って時に飲んでました。おいしかったです。
そして、椎の実は、かじります。
tona
2007年10月29日 20:42
「秋風色の花たち」と「ボンボン~!」にコメントしましたが入らなかったようで、改めて、此処で御礼申し上げます。ありがとうございました。

今日、「アブラチャン」のどんぐりが歩くところ一面に落ちていて、踏まないと歩けませんでした。プチプチと音を立てていまして、ごめんなさいと叫んでしまいました。真ん丸くて(細長くなくて)特徴があります。
そう、光っていました。
2007年10月29日 22:09
◇lavieさん

椎の実はビオフェルミンの味!!
実家でも茶色のガラス瓶入りビオフェルミンは常備薬でした。
ほんのり甘くて少し粉っぽいあの錠剤を、おやつ代わりに食べては叱られた覚えがあります(笑)。
あの歯ごたえがたまりませんでした!
椎の実も同じような歯ごたえがあるのですか?

>そして、椎の実は、かじります。

皮をむいて齧るんですよね?
2007年10月29日 22:22
◇tonaさん

>「秋風色の花たち」と「ボンボン~!」にコメントしましたが入らなかったようで

ちゃんとはいっていましたよ!
お返事も書かせていただきました。ご心配おかけして申し訳ございませんでした。
アブラチャンのどんぐり、まだ見たことがありません。
でもアブラチャン自体は、春の新芽をおひたしやお天ぷらにして食べます。
まん丸なアブラチャンのどんぐり、探してみますね。
それにしても「アブラチャン」とは愉快な名前ですね。
lavie
2007年10月30日 20:44
◇あの錠剤を、おやつ代わりに食べる・・・(にこっ)
 ですよね、aostaさん!(ほっ)
おいしかったですね。
わたしもお腹が痛くなると進んで食べたり、暇なときには、薬置き場を覗いては、いただいてました。
かりっ、こりっと
だから椎の実はその味なんです。
かじってみてください。
すると中から真っ白な実がのぞきます。
かじって半分にすると、実は、自然にぽろっととれますよ。
ドングリみたいな渋みはありません。
大人になって、煎って食べるという方法を知りました。
これは香ばしくてまたおいしいです。
2007年10月31日 09:21
◇lavieさん

かじってみます!!
椎の実はビオフェルミンの味!
みんなに教えてあげなくては。
多分、この辺りでは椎の実が食べられることを知らないんだと思います。
だって今まで聞いたことがありませんでしたから。

もう何十年も前、職場旅行で行った山陰で、雑木林の中にぼこぼこジコボウが生えているのを発見しました。でも地元の人に聞いたところ、その辺りでは誰も食べないのだとか・・・信州ではジコボウは一番人気のキノコです。
ところ変われば、と思いましたが、椎の実も同じことですね。
lavie
2007年10月31日 21:07
aostaさん、ぜひにね!
でも、わたしも大人になって椎の実を食べる機会が滅多にありません。
子どもの時の道草しながらのおいしいおやつだったのかしら。

「どんぐりと山猫」を久々に読んでみました。
一緒に掲載されていた「ツェねずみ」という話をはじめて読みました。
「償うてくだされ(まどうてくだされ)」を繰り返す何ともかわいげのない?ねずみのお話でした。
後、「フウねずみ」と「クンんねずみ」の話もありました。
2007年11月01日 07:22
ピッタンコの俳句が配信されていましたので・・・
山々と共に暮れゆく木の実かな     飯田 龍太
2007年11月01日 11:49
◇lavieさん

こちらにもコメントありがとうございます。
「どんぐりと山猫」もそうですが、賢治の童話って声を出して読んでみるとまた素晴らしいんです。言葉にリズムがあってイメージが膨らむ美しい言葉がちりばめられていてまるで音楽のようです♪

「ツェねずみ」、確か読んだ記憶があるのですが、どんなお話だったのか覚えていません。読み直して見ますね!!

2007年11月01日 11:50
◇イエローポストさん

ありがとうございます。
「山々と共に暮れゆく木の実かな」
ひと雨ごとに明きも深まっていきます。
2017年08月21日 20:09
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