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zoom RSS ブラームス 「弦楽六重奏曲 第1番 変ロ長調」作品18

<<   作成日時 : 2007/11/03 21:52   >>

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真っ青に晴れ渡った秋空で金色に黄葉した葉が輝く頃になると、
ブラームスの室内楽が恋しくなります。
深まってゆく秋の気配とブラームスの弦の響きはひとつになって、あの広く深い空から響いてくるような気がしてきます。

弦楽六重奏曲1番変ロ長調。
彼がまだ20代頃の作品ですが、ブラームスの低音弦の魅力が心に染みるような、若々しい希望と痛みに満ちた作品です。

第一、第2ヴァイオリンに加えヴィオラ2、チェロ2という編成からしても低音が充実しているだろう事は容易に想像できます。
いかにもブラームスらしい厚くて豊かな低音の響きはドイツ的な沈潜とともに、
わたしが最も秋を感じる曲です。


画像



ヴィオラとチェロの奏でる厚いハーモニーで始まる第一楽章は、間もなくチェロが、そしてしばらくしてヴァイオリンが、大きくゆったりとした第一主題を歌いだします。
明るいヴァイオリンの響き、大きな安心と幸福感に満ちたチェロ。
続く優美な第2主題で印象的なのは、何処か舞曲をおもわせる愛らしいヴィオラです。
軽やかなピチカート、印象的な音の飛び方は、ちょうど、舞い落ちる木の葉が葉裏を翻しながら秋風に舞っていく光景を見るようです。
いっとき輝く秋の光の中を舞っていた木の葉がやがて音もなく地面に散り敷いていきます。
弦の響きが、静かに凪いで行く風のように消えていった、と思う間もなく、すべての楽器の美しいピチカートの和音が立ち上がってこの楽章は終わります。

そして私にはもっともブラームス的に聴こえる第2楽章。
何処か悲痛な嘆きのような悲しみを感じさせるメロディーを、ヴィオラが、ヴァイオリンが、そしてチェロが重なるようにして奏でていきます。
この旋律を聴くたびに、遠い日の甘く哀しい痛みにも似た感情が胸に溢れて、いつ聴いても目元が熱くなってしまいます。
やがて揺れる想いを宥めるかのように穏やかなヴァイオリンと再びあの第一主題歌うをチェロとが囁き交わすため息のようにして終わっていきます。
この楽章でうっとりするほど美しいと私が思うのは、やはり深々と響くチェロの音色とピチカートです。

ブラームスといえば、クララ・シューマンとの恋愛が有名ですが、この曲はブラームスがアガーテ・フォン・シーボルトという女性との恋愛に破綻した直後に書かれました。
喜びと憂鬱、情熱と悲嘆、郷愁といったさまざまな感情が、そのまま旋律となったかのような第2楽章からは、青年ブラームスの、まだ癒えぬ傷の痛みがせつせつと迫ってくるような気さえします。


第三楽章、第四楽章については書かないのかと、聞かれそうですが、心に一番深く響いてくる第一、第2楽章だけで、私はもう溢れてしまうほどの想いでいっぱいになってしまいました。


今回のCDは第一ヴァイオリンがユーディ・メニューイン、チェロにモーリス・ジャンドロン
1963年の録音

        

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
いいですね。まさしく秋の曲です。
僕もこの曲は大好きです。
ヴィオラとチェロを厚くして、まさに中低音を厚くした音が、普通の弦楽四重奏曲や、弦楽合奏曲とままた一味違って、独特の響きを醸し出しているように思います。たしかこのCDは1番と2番のカップリングだと思いますが、僕は1番ばかり聴いていたように思います。

ジャンドロンは、僕が初めてバッハのチェロ組曲のレコードを買ったときのチェリスト。いかにもフランス人らしい甘いとろけるようなバッハでした。このブラームスの演奏でも、似たような印象を持ちました。

第一チェロは、明らかに特定のチェロ奏者を意識して作曲されたのでしょうね。時には、第一ヴァイオリンの演奏者より強い人が演奏することがあります。
Stanesby
2007/11/04 14:47
◇Stanesbyさん

>僕もこの曲は大好きです。

よかった!
ブラームスの、それも、室内楽というと地味な印象が強いかなとも思いましたので、そう言っていただけてとても嬉しいです。

>僕は1番ばかり聴いていたように思います。

私は1番の2楽章ばかり聴いていました。
メニューインのヴァイオリンは大好きなのですが、この曲に限って言うならば、チェロが素晴らしいんです。ここぞというところでは、必ずチェロが歌っています。”第一チェロは、明らかに特定のチェロ奏者を意識して作曲された”のでは、と仰るStanesbyさんのご意見、なるほどと思います。
深く豊かに歌うチェロと、高いところから降りてくるようなヴァイオリンの響きが互いに響きあい、絡まり、ひとつの物語のように私の心を波立たせます。

>時には、第一ヴァイオリンの演奏者より強い人が演奏することがあります

メニューインにジャンドロン、どちらもすごい!
ヴィオラもとってもいいです。
そのすごい演奏者たちが、自分だけ目立ってないんですよね。
本当に息があった素晴らしいアンサンブルです。
aosta
2007/11/05 08:53
 こんばんは。
 わたしもこの曲、大好きです。と言っても、この夏に初めて聴いたのですが。

> この曲はブラームスがアガーテ・フォン・シーボルトという女性との恋愛に破綻した直後に書かれました。

 そうなんですか。いかにも、青春の歌、と言う感じだな、と、思ってました。
 それにしても、今の季節、ほんとに、チェロの響きが心にしみます。
 バッハも、ちょうど今頃から、急にカンタータに小型チェロを使い始めます。いろいろな理由が考えられるのですが、aostaさんの記事を読んでいると、バッハも単に秋めいた気分になったのかな、などと思ってしまいます。
Nora
2007/11/08 23:34
◇Noraさん
 おはようございます。

そういえば今年は他にも、ブラームスを聴いていらっしゃるんでしたね。
室内楽に限らず、交響曲においてもブラームスの弦の響きは本当に心を揺さぶる美しさです。
謹厳実直を絵に描いたような印象のブラームスですが、クララに、終生、愛と尊敬を捧げた情熱の人でもあったのですね。
一度は婚約までしたアガーテとの恋の破局の背景には、クララへの断ち切れぬ思いがあったのかもしれません。
こうした背景を知っていても、知らなくても、この曲は聴く人に若さの輝きと痛みを感じさせる素晴らしい音楽だと思います。

バッハのオブリガード・チェロの曲、BWV180番「装いせよ 我が魂よ」
高橋たか子さんの同名の小説のイメージが強くて、聴きにくかったのですが、気持ちをリセットして聴いてみますね。
aosta
2007/11/10 09:45
私はこの曲は大学生の時に、カザルス、スターン達のモノラルLP盤を聴いて大好きになりました。この曲の持つ若さ故の苦しみ、悲しみに対して共感したのだと思います。特に前半の第1楽章、第2楽章は今聴いても身震いがしてきます。
ハルくん
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2008/10/13 08:37
◇ハルくんさん
 コメントありがとうございます。

>特に前半の第1楽章、第2楽章は今聴いても身震いがしてきます。

私も全く同じです。全身で音楽に反応する、とでも言ったらいいのでしょうか。カザルス、スターンの演奏、と聞いても身震いしてしまったaostaです。
この曲にはブラームスの悲しみ、苦しみの中に取り込まれてしまうかのような吸引力、共振性を感じてしまいます。
聴いていながら、身もだえするような激しさもあります。
aosta
2008/10/14 10:43

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