テーマ:詩 (by aosta)

約束

あの子は ずっと個室だった 未就学児から小学校低学年の子供ばかりの病棟で 高学年の彼は お兄ちゃんだった お兄ちゃんだから 個室なのさ 彼はいつも そう言って強がった どの子にも 母親が付き添う小児病棟で 彼は ひとりだった ごくまれに 彼を訪なうのは  施設の寮母さん…
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詩ではなく「詞」を・・・ ② 「はなかんむり」 & 「たくらみ」  

はなかんむり     詞 岡埜葡萄 若草踏んで 君は踊るよ かかとに光る 朝露の色 遠い日の夢 遠い日の歌 忘れていた 昔さ 花かんむりに 君が笑えば 僕のこころも うたう つま先立って 君が踊るよ うなじに揺れる 花びらひとつ くさすみれ 風の色 忘れていた 昔さ 風立つ野辺で 君…
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詩ではなく「詞」を・・・ ①

作曲家新実徳英さんの「白いうた青いうた」は大好きな曲集だ。 シンプルなメロディーだけれど、一度聴いたら忘れられない叙情的かつドラマティックな曲と詩人谷川雁さんの詞は、これ以外に考えられないほど完全にひとつとなって分かちがたく豊かな世界を作り出している。 詞があって曲はあとからつけられるのが普通だが、新見さんと谷川さん…
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祈り / 「ポルト・リガトの聖母」 サルバトール・ダリ

しばらく前から気になっていた一枚の絵、「ポルト・リガトの聖母」。 ピカソと並んでスペインが生んだシュール・レアリスムの奇才、ダリの絵だ。 朝の光とも、黄昏に暮れ残った残照とも判別できない不思議な真珠色の明るさの中で、 膝に幼子を抱き、両の手を祈りの形に合わせている女性。 「ポルト・リガトの聖母」 全てが整然と空中に浮遊…
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夏の花束

朝陽が差し込む店先に 折取られたばかりのような あざみの花が ひと抱え ブリキのバケツに投げ入れられていた すっくと元気よく伸びた葉先には 水滴が白く 光っていた 棘だらけのあざみ そのひと抱えを  大きな花束にして 帰った日 棘の痛みは 哀しみに似ていた 哀しみと喜びは  同じ…
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星がみる夢

しんしんと  降り続いていた 雪がやんで 月が出た 夢が 蒼い光となって 降りそそいでいる 夜は 沈黙して 雪のなかに沈んでいる フリーダウンロード のページから 星空 by hiro2 月明かりの下で 犬は 小さく 丸くなって 眠りな…
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棘(とげ)

心の中には いつも 小さな 哀しみの種がある 棘だらけで 固い 小さな種だ 両の手のひらで そっと包んでみても、 かたく握りしめても、 種は 鋭い棘で 私を刺す。 けれどわたしは 時々 その種を握り締める。 私を刺す棘は痛いけれど 痛みは 存在そのものだから。 …
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夕闇の匂いが迫る道を 少年が 走っている。 膝小僧は  白く  規則正しく 少年は ただ全速力で 駆けている。 山の端に 月が昇る。 空気の色が 青くなり 風が  高い空の下で  旗のように 鳴り始める。 夜は 静かに澄んでゆく。 少…
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午後のアサリ

物憂げに 陽のあたる 長閑な昼下がりの台所で チチ、チチ、チチ、と 小さな音をたてながら アサリが 砂を吐いている。 それは 違うでしょう アサリ。 朔太郎氏に 申し訳ない。 あなたは 深夜の台所でひっそり妖しく ぼんやりと燐のように  青白く 発光しながら 砂を吐くべきではないのだろうか。 しかし…
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薬包紙の秘密

さらさらと白い粉薬が苦手でした。 冷たい母の手が、かすかな音を立てながら薬包紙を開くとき、 ほてった頬は熱のためにではなく、 緊張のためにいっそうのこと熱くなるのでした。 枕の氷はすでに溶けて、頼りない水の感覚だけが頭を支えています。 粉薬は舌の上で苦く固まったまま、どうしても喉を通っていきません。 枕元でふっと…
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晩秋の声

暗い雨の夜だった。 ドアを開けると、暖かい光と 柔らかな暖気に 身体中が 包み込まれるようだった。 「最初に燃やしたのは 白鍵。」 ストーブの扉を開けながら  楽器をつくるその人はつぶやいた。 「今 燃えているのは黒鍵。 象牙が欲しいといったら、古いピアノの鍵盤が送られてきた・・・」 KAWA…
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地下水脈の夜

地下を流れる 透きとおった水にも似て さわさわと つぶやくような声を 立てながら 霜枯れた 木の葉は 闇の中 黒いアスファルトの上を  風に流されていく 夜明けの時を迎えても 冷気が結ぶ露のなかに 闇は 閉じ込められたままだ 長谷川潔  「玻璃球のある静物」 日付が変わるとき 森…
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海月時間

光りとて届かぬ 漆黒の水底(みなぞこ)から 淡く 仄かな  燐のような 輝きをまとい ひとつひとつの 原初の記憶のように  浮かび上がってくるもの 海の月 または 水の母たち するすると  しなやかな 触手を 伸ばす 時は いま 海月時間 …
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真夏の死

私を 呼んだのは 誰? 私を 呼んだのは おまえ? 風が 痛い。 ひかりは 棘のようだ。 何千日もの間 何万時間もの間 待っていた。 待つことだけが すべてだった 闇のなか 沈黙だけが 音だった 耳に それは 優しかった 沈黙だけに 耳を済ませて 過ぎていった 時間…
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羊歯(シダ)の見る夢

記憶の かなた 時の扉が  ゆっくりと ひらいてゆく 立ち昇る 蒸気のなかで とおく ゆらゆらと 陽炎が 立つ。 羊歯は 時の彼方で 緑濃い 沈黙を 積みあげる。 暗い地底の 奥深くから さらさらと、 風のような音を 立てながら  導管のなかを 昇…
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火の記憶

「火の匂いがする」 少年は 暗闇の中で 目を見開いた。 傍らで 眠っていた母親は 彼のことばの意味が わからなかった。 野町和嘉写真集「ナイル」より 「火の匂いがする」 もう一度 少年は 小さくつぶやいた。 意識は半分 ねむりのなかに。 けれども その声には たしかな怯…
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わたしの耳

かなしいときは 涙じゃない 耳。 耳の奥が  つんと  痛くなる わたしの  耳。 わたしより先に  何が  かなしいの? 教えてよ なにが かなしいのか 2007 -07-13  aosta ★またまたちょびママさんのお写真。   …
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花を摘む

花を摘む 雨上がりの 朝の庭で  ひかりを摘む  白樺の梢で ため息をついている  あけぼのいろの 朝の ひかり  露玉の中で まるく まどろむ  虹いろの 朝の ひかり   言葉を摘む 言葉には ならなかった    言葉にしては ならなかった     言葉では 伝わらな…
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風が運ぶもの

目を閉じて 風を探す 両手を広げて 風をつかまえる 風は笑う 風は歌う 「海からの風」Wind from the Sea(1948) アンドリュー・ワイエス あのときの 私の心から 何かの挨拶のように 風が吹いてくる。 何かをことづけたくて  遠いあの日か…
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滴りおちる・・・

静かに雨が降っている。 暖かな春の雨。 雨音しか聞こえてこない夜・・・ でも遠くから聞こえてきた、 滴り落ちるような音は、あの音は・・・? 学校から帰ってくると誰もいなかった。 いつも必ず母の姿がある台所に、人の気配はない。 西陽ががらんと傾いて空っぽな明るさで差し込んでいる。 何かが滴る音。 流しに滴る水…
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