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約束

あの子は ずっと個室だった 未就学児から小学校低学年の子供ばかりの病棟で 高学年の彼は お兄ちゃんだった お兄ちゃんだから 個室なのさ 彼はいつも そう言って強がった どの子にも 母親が付き添う小児病棟で 彼は ひとりだった ごくまれに 彼を訪なうのは  施設の寮母さん…
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アナベル、それとも「わが美わしのアナベル・リィ」

雨にぬれて露とともに憂いを含んでいる青い紫陽花、または恥らうような薄いピンク色の紫陽花。 紫陽花には雨が似合います。 私が好きな紫陽花、アナベル。 咲き始めに淡い緑色の影が射すこの花は、満開時には輝く純白となります。 緑色と白の清らかなグラデーションも美しいアナベルが咲く季節になると、涼しげな鈴の音にも似たリフレイン…
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詩ではなく「詞」を・・・ ② 「はなかんむり」 & 「たくらみ」  

はなかんむり     詞 岡埜葡萄 若草踏んで 君は踊るよ かかとに光る 朝露の色 遠い日の夢 遠い日の歌 忘れていた 昔さ 花かんむりに 君が笑えば 僕のこころも うたう つま先立って 君が踊るよ うなじに揺れる 花びらひとつ くさすみれ 風の色 忘れていた 昔さ 風立つ野辺で 君…
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詩ではなく「詞」を・・・ ①

作曲家新実徳英さんの「白いうた青いうた」は大好きな曲集だ。 シンプルなメロディーだけれど、一度聴いたら忘れられない叙情的かつドラマティックな曲と詩人谷川雁さんの詞は、これ以外に考えられないほど完全にひとつとなって分かちがたく豊かな世界を作り出している。 詞があって曲はあとからつけられるのが普通だが、新見さんと谷川さん…
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『風』 二題

堀 辰雄 『詩』より         僕は歩いてゐた 風のなかを 風は僕の皮膚にしみこむ この皮膚の下には 骨のヴァイオリンがあるといふのに 風が不意にそれを 鳴らしはせぬか 皮膚の下にある骨のヴァイオリン・・・ その音色はきっと軋んで悲しい。 ひりひりと吹きつける風で、人知れぬ想いが音を…
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夏の花束

朝陽が差し込む店先に 折取られたばかりのような あざみの花が ひと抱え ブリキのバケツに投げ入れられていた すっくと元気よく伸びた葉先には 水滴が白く 光っていた 棘だらけのあざみ そのひと抱えを  大きな花束にして 帰った日 棘の痛みは 哀しみに似ていた 哀しみと喜びは  同じ…
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星がみる夢

しんしんと  降り続いていた 雪がやんで 月が出た 夢が 蒼い光となって 降りそそいでいる 夜は 沈黙して 雪のなかに沈んでいる フリーダウンロード のページから 星空 by hiro2 月明かりの下で 犬は 小さく 丸くなって 眠りな…
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棘(とげ)

心の中には いつも 小さな 哀しみの種がある 棘だらけで 固い 小さな種だ 両の手のひらで そっと包んでみても、 かたく握りしめても、 種は 鋭い棘で 私を刺す。 けれどわたしは 時々 その種を握り締める。 私を刺す棘は痛いけれど 痛みは 存在そのものだから。 …
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夕闇の匂いが迫る道を 少年が 走っている。 膝小僧は  白く  規則正しく 少年は ただ全速力で 駆けている。 山の端に 月が昇る。 空気の色が 青くなり 風が  高い空の下で  旗のように 鳴り始める。 夜は 静かに澄んでゆく。 少…
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「マリー・ノエルの祈り 」/ アドヴェントのともしび

もしも私が、 自分の自我という最も高い山に 登っていくのなら、 もしも、私が、 大地も、大気も、目も、耳も、 足も、手も、生活も、 何もかもかなぐり捨てて、 自分の魂の最も高い頂きに 留まろうとするのなら、 その時、私は神に近づいていることになるのだろうか。 天に触れる…
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午後のアサリ

物憂げに 陽のあたる 長閑な昼下がりの台所で チチ、チチ、チチ、と 小さな音をたてながら アサリが 砂を吐いている。 それは 違うでしょう アサリ。 朔太郎氏に 申し訳ない。 あなたは 深夜の台所でひっそり妖しく ぼんやりと燐のように  青白く 発光しながら 砂を吐くべきではないのだろうか。 しかし…
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「そのうす青き玻璃(はり)の器に」 宮澤賢治 

雨が霙に変わってくると 雨が霙に変わってくると 室(へや)はよどんで黄色にくらく 仰いでさびしく息すれば おおまた 左肺よ 左肺のなかに にごったルビーの西燈(ランプ)がともる そのうす青き玻璃の器に そのうす青き玻璃の器に しづかにひかりて澱めるは…
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リルケの言葉

ライナー・マリア・りルケ(1875~1927)、カフカと同じく、ハンガリーのプラハ生まれの詩人です。 そして私にとっては、大好きなと言うより、特別な詩人。 でも20代の頃は、若い時期にありがちな一種のポーズでリルケを呼んでいたような気がします。 10年、20年とそれ以上の年月を経て、リルケは静かな輝きと新しい気づきを再び私にも…
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スカルラッティのチェンバロ・ソナタを聴きながら・・・

D.スカルラッティのチェンバロ・ソナタ ホ長調のアンダンテ(K.215)を聴いていたら、むかし読んだ立原道造の詩が浮かんできました。 立原道造 「優しきうた」  薊の花がすきな子に  IV 薄 明 音楽がよくきこえる だれも聞いてゐないのに ちひさきフーガが 花のあひだを 草の葉のあひだを 染めてながれる …
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『てふてふが1匹 韃靼海峡を渡って行った』

『てふてふが1匹 韃靼(だったん)海峡を渡って行った』 この詩とも俳句ともつかないたった一行が持つイメージの鮮烈さはなんだろう。 蝶々と読ませる、この「てふてふ」という平仮名の持つ視覚的イメージは蝶の羽ばたきそのものを喚起させる。 死期を間近にしていた、詩人安西冬衛の「春」という1行詩だ。 韃靼海峡とは、アジア大陸とサハ…
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金井直 「私に見え 私に見えないもの・・・」

折に触れては思い出すこの詩のタイトルを、私は知らない。 何気なく読んでいた本の中で、偶然見つけたこの一遍の詩。 金子光春や村の村野四郎に続く詩人として、またリルケの多大な影響を受けた詩人としてその名を記憶していた金井直。 その彼の詩を読んだのは「木琴」とこの作品のわずかふたつでしかないのだが。   私に見え  …
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『ゆずり葉』

ゆずり葉   河井酔名    子どもたちよ    これは譲り葉の木です    この譲り葉は    新しい葉が出来ると無造作に落ちる    新しい葉に命を譲って        子供達よ    お前達は何を欲しがらないでも    凡てのものがお前たちに譲られるのです    太陽の回るかぎり    護られものは絶えま…
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どこかに置き忘れてきたもの  中桐雅夫 『足と心』

「海はいいな」と少年はいった、 「そうかしら、わたしはこわいわ」と少女が答えた、 少年はほんとうに海が好きだったが、 少女のこわかったのはなにか別のものだった。 それからふたりの足はとげのうえを歩いてきた、 ふたりの心もとげのうえを歩いてきた、 やがて足も心も厚くなって、 とげもどんな鋭い針も通らないようになった。 …
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「どきどき」の対象は?

時には6月に雪が降るし 時には太陽が月をまわるのね あなたのまなざしに熱い想いを感じると 時には、私、胸がどきどきしてどうしようもないの Sometimes the snow comes down in June Sometimes the sun …
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水の上に 水のひびき ・・・・

「水の上(へ)に 水のひびき 葉のうへに さらに葉のかげ」    「今宵 床上(しょうじょう)にあって 手 壁面にものの影をゑがく 月いでぬ」       「雨 すこしずつ雪となり 泥すこしづつ金となる」 美しい沈黙のあと、風が歌うように記された、これらの言葉。 作者は、フランスの詩人・劇作家であり外交官でも…
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